今回はマルチバンドコンプレッサーの使い方について、DAWソフトのCubaseで解説します。
コンプレッサーは、音の大小(ダイナミクス)を少なくさせて、平坦に近いようにもっていく作業になります。
そして、マルチバンドコンプレッサーは、音域ごとにかけるコンプの度合いを調整することができるコンプレッサーになります。
ミックス前の全体に、マルチバンドコンプレッサーを使用することで、マスタリング作業をさせることができます。
マスタリングとミックスとどう違うのかですが、マスタリングは、ミックスした音源をどの媒体で鳴らしても聴きやすくさせるような作業で、それを元にCDなどが作られたりします。
手順ですが、マルチバンドコンプレッサーをかけない状態で、全体のバランスがいい状態にしてください。
左右のバランス、音域の高低のバランス、音量の大小差のバランスなどです。
そのときに重要なこととして、メーターで音量の大小をチェックして、ピークのときに0まで到達しないことがベストです。
音のピークが0ですので、それを超えたときは、音が正確に再生されない割れた音になります。
0に一瞬でも到達した場合は、ミックスバランスでボリュームを下げるか、もしくは各パートにコンプをかけるなどして、到達しないようにさせてください。
逆に、メーターの0まで全く行かないぐらい、音量が小さいのもよくありません。ピークのときに、0の手前ぐらいになるのがベストです。
上の音は、マルチバンドコンプレッサーをかける前の音になります。ちなみに、これは私の曲で、1年前に当時のバンドメンバーに、電子ドラム、エレキギター、ピアノなど手伝ってもらっています。
- ボーカル
- ドラム
- ベースギター
- フォークギター
- ピアノ
- エレキギターリフ
この音に含まれるパートは6パートになります。
次に「スタジオ」→「MixConsole」を開きます。ミキサー画面になります。
Stereo Outの上の方のINSERTSを開き、
「Dynamics」→「Multiband Compressor」をクリックします。
最初の段階でStereo Outは0になっていますが、これは基本的に0のままにしてください。
コンプレッサーをかけたときに、0がピークになるように合わせてくれるからです。
Rock Master
マルチバンドコンプレッサーには、プリセットがついていて、基本的にはプリセットを選択するだけで、そのジャンルとしてオーソドックスな設定になってくれます。
上の音は、Rock Masterの音になります。
EQと同じで、右側が高音域、左側が低音域になります。
上のグラフは、それぞれの音域のボリュームで、
真ん中のグラフは、音域に対して、どれだけコンプをかけるかという設定になります。
斜めの直線が角から角まで一直線なら、全くコンプがかかっていないことを示します。
どれぐらいの音量を超えたときに、どれだけのコンプをかけるかということを、設定できます。
スレッショルド(THRESH)は、その音量を超えたときにコンプがかかることを意味します。
レティオ(RATIO)はコンプをかける度合いを意味します。
ロックマスターのプリセットは、低音域はコンプをあまりかけず、高音域にコンプを多くかけている設定になっています。
R&B Master
R&B Masterは、高音域はあまりコンプはかかっていませんが、それ以外の音域でコンプを多くかけています。
特に目立つのがベースの音が、ドンドンとよく響くようになりました。悪く言えば、弾いたときの強弱があまり感じられないようになっています。
Dance Master
Dance Masterは、音的には、R&B Masterと似ていますが、グラフを見る限り、R&Bよりはコンプは少な目です。そして高音域のボリュームがR&Bより大きくなります。
Ballad Master
Ballad Masterに関しては、コンプは大きな音にだけ少しかけているイメージです。
他に、ボリュームとしては高音部が大きくなっています。
コンプレッサーはかけることで、全体の音量を均一化させることと同時に、ピークの音量に全体的に近づける作業もするため、かけることにより、音量は上がって聴こえます。
このことをDTMをする人は音圧が上がる、という表現を用います。
ただ、このコンプレッサーをかける作業は必ずしなければいけないわけではありません。
クラシックの演奏などの場合は、コンプレッサーを通常はかけないことが普通です。音の強弱(ダイナミクス)が、コンプレッサーをかけることにより少なくなるからです。
そういう意味で、しっとりとしたバラードの場合は、コンプを少なくすることで、強弱を失わない設定にしていると言えますね。
余談にはなってしまいますが、なぜ今の音楽でコンプレッサーが重要視されるようになったかということを説明させていただきます。
80年代から90年代のCDができた当初のCDと、今のCDと聞き比べたことがあります。
シンセなど音そのものが進化したことで変わったことがありますが、それより、単純に音が大きくなっています。
コンプをかけることにより、大きくしているのですね。
なぜコンプをそもそもかけるのかですが、
曲を聴いたときに、音が大きい方が目立って聴こえること。またいい曲のように聴こえる、ということがあります。
サブスクなどでいろんな曲を少し聴いては飛ばすなどの場合は、音が小さいだけで、イマイチだなという感想を持たれてしまうケースがあります。
そんなこともあり、他の曲の基準より小さく聞こえさせないように、コンプで少しでも大きく音量を感じさせるようにしているんですね。
とは言え、音の強弱、ダイナミクスが少なくなるというデメリットもあるため、そのあたりは、エンジニアの判断になるということはあります。